地震が頻繁に発生する日本では、住宅の耐震性は重要なポイントです。
特に、木造住宅と鉄骨造住宅は構造が異なるため、どちらを選べばいいのか迷っている方も多いのではないでしょうか？
今回は、木造住宅の耐震性について、鉄骨造住宅との比較を交えながら解説します。
木造住宅の耐震性能は本当に安心できるのか、地震対策のポイントにはどういったものがあるのかなど、具体的な情報と合わせてご紹介します。

木造住宅の耐震性

木造住宅は地震に弱いと思われがちですが、実際には十分な耐震性を備えた住宅を実現できます。
木材は軽くて適度な柔軟性を持ち、地震の揺れを吸収しやすい性質があるため、鉄骨造住宅と比べても引けを取らない耐震性能を発揮します。
近年では、耐震等級に基づいた設計基準が整備されており、等級が同じであれば木造住宅と鉄骨造住宅の耐震性能に大きな差はありません。
地震に強い住宅を建てるためには、地盤調査を徹底し、耐震等級3の設計基準を満たすことが重要です。

耐震等級で見る木造住宅と鉄骨造住宅

耐震等級は建物の耐震性能を評価する基準で、等級1から3までのランクがあります。
等級1は震度6強から7程度の地震で倒壊しない最低基準を満たし、等級3はその1.5倍の地震力にも耐える最高ランクです。
木造住宅でも、耐震等級3を満たす設計を行えば、同じ等級3の鉄骨造住宅と同等の耐震性能を実現可能です。
一方で、鉄骨造は鉄の高い強度によって優れた耐久性を発揮しますが、その重量が建物の揺れに影響を与える場合があります。
重い建物は揺れ幅が大きくなる傾向があり、揺れ幅を小さくするためには、耐震性能をより強化する必要があります。
これに対し、木造住宅は軽量であるため、地震時の揺れが比較的小さく抑えられ、家財や内装の被害を軽減する効果が期待できます。

関連記事:耐震等級3相当とは？耐震等級3との違いを解説します！

木材と鉄の差

・比強度

木材は鉄に比べ非常に軽量で、地震時の揺れを軽減する効果があります。
同じ重さに対する強さを示す比強度で比較すると、木材は鉄に対し、引っ張り比強度で約4倍、圧縮比強度で約2倍、曲げ比強度で約15倍という優れた性能を持っています。
日本のような地震が多い国では、軽量で高い比強度を持つ木材は住宅づくりに適しているといえます。

・火災に対する耐性

木材は燃焼時には表面が炭化して内部を保護する特性があるため、全焼までの時間が長く、構造物が倒壊しにくい性質を持っています。
木材の強度が半減するまでには火災発生から約20分程度かかるとされています。
一方、鉄は約250℃で変形が始まり、約500℃に達すると強度が半減します。
住宅火災の場合、火災発生から約5～10分で室内温度が500℃程度に達することが多いため、鉄を使用した建物は倒壊までの時間が早くなります。

・断熱性能

木材と鉄を断熱性能で比較すると、木材は鉄に比べて優れた断熱性を持っています。
断熱性能は熱伝導率によって決まり、木材の熱伝導率は約0.2W/m・K、鉄は約80W/m・Kと大きな差があります。
この違いは、木材は細胞の集合体で、その細胞内に空気が含まれているためです。

木造住宅の地震対策

住宅の地震対策には、耐震に加えて「制震」と「免震」があります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

・制震構造

制震構造は、建物に取り付けられたダンパー（制震装置）が地震の揺れによるエネルギーを吸収し、減衰させる仕組みです。
ダンパーには、オイルを利用したものや金属の弾性を活用したものがあり、揺れが発生するたびにそのエネルギーを効率的に消散します。
木造住宅では、制震テープを建物全体に使用することで、お家全体をダンパーの役割を持つ構造にし、揺れを効果的に軽減します。
制震構造の主なメリットは、比較的コストを抑えて地震による建物の損傷を軽減できる点です。
くり返しの地震にも強く、建物の耐久性や寿命を延ばす効果が期待できます。

・免震構造

免震構造は、建物の基礎部分に設置された免震装置を用いて、地震の揺れを建物に直接伝えないようにする仕組みです。
免震装置には、ゴム製の部材やボール状のパーツが使用され、建物全体が揺れに合わせてゆっくりと動くことで、揺れのエネルギーを大幅に低減します。
免震構造は、病院や役所、高層ビルなど、重要な機能を持つ建物で主に採用されています。
設置コストが高いため、一般的な木造住宅では免震構造を採用するケースは多くありません。

関連記事:地震に強い家の特徴とは？耐震・免震・制振構造の違いもご紹介します 

木造住宅の強み

・自然な美しさと快適さ

木造住宅は、木が持つ独特の温かみや自然な美しさが魅力です。
木材は湿度を調整する性質があるため、室内の空気を快適に保ち、木の柔らかい質感や香りは住む人に癒しを与え、心地よい空間を演出します。
また、木材の断熱性と調湿効果により、夏は涼しく冬は暖かい環境を実現できます。
こうした木の自然な特性によって、一年を通じて快適な環境を実現できます。

・コストパフォーマンス

木造住宅は他の構造と比較して建築コストを抑えられる点が大きな魅力です。
木材は加工がしやすく、軽量であるため、建築時の人件費や工期が短縮できることがコスト削減に寄与します。
また、断熱性に優れているため、冷暖房費を抑えた省エネルギー性が高く、将来のメンテナンスやリフォームの自由度や、コストを抑えながら長期間住み続けられる強みがあります。
初期費用だけでなく、長期的な運用コストを考慮しても経済的な選択となる優れたコストパフォーマンスを発揮します。

・環境に優しい

木造住宅は、環境負荷が低いエコな選択肢です。
木材は再生可能な資源で、二酸化炭素を吸収し蓄える性質を持つため、住宅として使用されることでカーボンストック効果を発揮します。
廃材のリサイクルや再利用が容易な点も、環境に配慮した持続可能な住宅づくりに貢献しています。

木造住宅に永く住むコツ

木造住宅に長期間安全に住み続けるためには、地震対策だけでなく、定期的な維持管理が重要です。
特に、地震後の点検と早期修繕は、建物の寿命を延ばし、ご家族の安全を守ることにつながります。

1. 地震後の点検と早期修繕

地震の揺れにより、木造住宅には小さな亀裂や接合部の緩みが発生していることがあります。
地震後は、基礎の亀裂、柱や梁の接合部の緩み、屋根・外壁のズレや損傷などの箇所を重点的に点検しましょう。
これらの損傷を放置すると、将来大きな被害につながる可能性があります。
必要に応じて、専門家に点検を依頼し適切な修繕を行いましょう。

2. 耐震補強とメンテナンス

近年の木造住宅で使用されている耐震パネルや制震テープなどの補強材は、経年劣化により性能が低下する可能性があります。
定期的に点検を行い、劣化や緩みが見つかった場合は交換や補修を検討しましょう。
また、築年数が古い住宅であれば、最新の耐震基準に合わせたリフォームを行うことで安全性を向上させることができます。

3. シロアリや腐食への対策

木造住宅は、シロアリや腐朽に弱いため、適切な対策が必要です。

・防蟻処理を施し、シロアリの侵入を防ぐ。
・床下や壁内の通気性を確保し、湿気がこもらない環境を維持する。
・定期的に建物の内外を点検し、腐朽やシロアリの被害がないか確認する。

4. 定期的な点検スケジュールの作成

木造住宅の寿命を延ばすためには、計画的なメンテナンスが重要です。
10～15年ごとの外壁の塗り直しや、20～30年を目安とした大規模なリフォーム計画を作成すると効果的です。
特に、耐震性や防水の強化を目的としたリフォームは、住宅全体の安全性を大きく向上させます。

5. 専門家によるアドバイスを活用

建築した住宅会社に点検を依頼することで、建物の構造や履歴を熟知した専門家によるアドバイスを受けることができます。
また、一部の自治体や住宅会社では、無料の耐震診断を行っている場合もあります。
木造住宅の長期的な維持管理を徹底することで、ご家族の安全を守る住まいを実現できます。

関連記事:木造建築の耐久性ってどのくらい？詳しく解説します！ 

まとめ

木造住宅の耐震性は、昔に比べて格段に向上しており、耐震等級に基づいた設計基準を満たすことで、鉄骨造住宅と同等の耐震性能を実現できます。
木材の比強度は鉄より優れ、軽量かつ柔軟性が高い素材特性のため、地震の揺れを吸収する能力があります。
また、制震構造や免震構造を取り入れることで、地震による被害を軽減し、建物の寿命を延ばすことも可能です。
地震に強い住宅を建てるためには、地盤調査を徹底し、耐震等級3の設計基準を満たすことが重要です。
ご自分たちのライフスタイルや地域の条件に合ったお住まいを選び、安心して暮らせる家づくりを行いましょう。

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